競輪自転車にはブレーキが無い!止まり方や変速機を使えないワケ

競輪自転車の特徴は、オーダーメイドで作られていて、接触防止を目的にブレーキと変速機がないことです。ギアはあるけど変速機がない点が大きな特徴で、選手は脚質や戦法に合わせたギア調整をしてレースに臨んでいます。

競輪自転車の特徴

山道を自転車で登る男性

昨今はロードバイクブームで、公道を競技用自転車で走る人をよく見かけますよね?
競輪で使う自転車は「レーサー」、「ピスト」などと呼ばれ、街中で見るロードレーサーと見た目が似ていますが、以下の特徴があります。

  • 体型に合わせたオーダーメイドが主流
  • 短距離に特化したポジション
  • フレームはカーボンが主流
  • ブレーキがない
  • 変速機がない

オーダーメイドが主流なのは、競輪選手はプロにあたることが理由で、アマチュア向けには市販用のレーサー(トラック競技専用自転車)も売られています。
フレームはカーボンが主流で車体の最低重量は6.8kg。ロードレーサーも最低重量は共通ですが、カーボンの他にもアルミとクロモリがあります。
ただし、プロや大きな大会に出場する選手の多くはカーボンフレームを使っているため、フレーム自体にロードレーサーと競輪自転車に大きな違いはありません。
競輪は短距離での瞬発力を重視し、前傾姿勢に特化した形状にカスタマイズしている点が特徴です。
競輪自転車ならではの特徴はブレーキと変速機がないこと。これは他のトラック競技用自転車にも共通しています。

ブレーキと変速機がない理由

ブレーキと変速機がないのは軽量化を目的だと勘違いする人がいますが、実際には安全対策を目的にしています。
競輪はトラック(バンク)を7~9車で接近しながら高速域で競い合う競技です。
選手が何かの理由でブレーキを握った場合、他の選手と接触して多重クラッシュ(落車)へ発展しやすいため、ブレーキの着用を禁止しています。
変速機についても同じで、高速走行中のギアチェンジにおける僅かな減速や、ギアチェンジの操作ミス・チェーンが外れるなどの不具合で選手が接触するリスクを避けることが主な目的です。
軽量化のメリットもありますが、競技用自転車は最低重量の制限があるため、ブレーキや変速機の部品重量程度は大きな問題にはなりません。

競輪自転車の止まり方

普通の自転車はペダルを漕ぐのをやめるとタイヤが空転します。下り坂の場合はペダルを漕がなくても自転車がどんどん加速していきますよね?
競輪自転車は変速機がなく、後輪とペダル(クランクアーム)が固定されているため、タイヤが回るかぎりはペダルも一緒に回る構造です。
そして、選手は漕ぐ力を緩める。もしくはペダルが回ろうとする力を抑えようとすれば自転車が減速します。

ただし、一般的なレバーを握るブレーキ付きの自転車に比べて、制動力は非常に低いです。
競輪自転車は専用コース(バンク)での周回レースのみで使うことを想定されています。
バンクは対向車や歩行者のいない一方通行で、ブレーキがかからなくても走行ラインから離脱すれば安全な環境を手に入れられます。
目の前で落車した選手がいて避けるのが困難な場合は、諦めてほぼノーブレーキで突っ込むしかありません。

速機がない難しさ

競輪自転車には変速機がありませんが、ギアはあります。つまり、走る前にギアのセッティングを行い、走行中は固定されたギアで走り続けないといけません。
変速機がなくてギアの設定をできる点に競輪の難しさがあります。
ギアの設定は、逃げを目的にしている選手の場合は高速域での伸びを重視します。
普通の自転車でいえばギアを重くする状態で、スピードに乗せるまでは大変ですが、スピードを乗せれば少ない力で漕ぎ続けることが可能です。

追い込みを得意にしている選手はギアを軽くして、ゴール前にケイデンス(ペダルの回転数)で一時的に加速して逃げる選手を抜こうとします。
簡単にまとめると、プロの競輪選手が扱った場合はギアを重くするより適度に軽くした方が一時的な最高速を出せますが、それを長時間続けることができません。
アを重くすれば、瞬発力を失うかわりにスピードを乗せて長い距離を走りやすくなる仕組みです。

競輪選手は得意な戦法やレースに応じた戦略でギアの調整を行っています。
仮に逃げ・先行を目的にしてギアの設定をしていたけど、ポジション争いに負けて後ろからのレースを余儀なくされた場合、作戦変更して差し・追い込みで勝負するのが困難になります。
変速機がない関係から、競輪は事前に想定した展開でレースを進められるかが非常に重要で、狙っていたポジションを取れないとギア設定の問題からレース中に戦法を変えて勝ちきることが難しいです。

速機がない難しさ

競輪自転車はNJS認定ピストと呼ばれ、認証を受けた工房のみで作られていて、承認された部品しか使えないルールです。
つまり、競輪自転車はオーダーメイドの選択肢しかなく、他のトラックレーサーよりも厳しいレギュレーションを設けられています。
値段はおおよそ50万円前後。競輪選手は勝敗によって年収が大きく変わるため、コストを惜しまずに発注しています。

オリンピック種目のトラック競技は、国際規格で定められた自転車を使う必要があり、レギュレーションに沿ってオーダーメイドで作られることが多いです。
競輪選手がオリンピック種目のケイリンに出場する際は、普段の競輪で使うのとは異なる自転車を活用しています。

このほか、アマチュア向けのトラックレーサーはブレーキ・変速機を付けられないルールは共通ですが、細かい部品や工房の指定がありません。
トラックレーサーは市販品も売られていて、アマチュア選手からは公道での練習もできるようにブレーキの脱着機能付きのタイプが人気。市販品の価格は安いタイプで10~15万円ほどです。